教官卒業

 何度か、このブログで、司法研修所の教官に関して書いてきましたが、その教官職は、4月12日をもって、事実上終了しました(正式な解嘱は4月19日金曜日)。
 今年の3月21日から始まった第77期司法修習生に対する導入修習が4月12日に終了したのですが、その12日が、77期の導入修習最後の授業であり、私の教官としての最後の授業でもありました。今後、私が司法研修所の教室で教鞭をとることはおそらくありません。 

 思い返せば、就任した2021年5月は、コロナ禍の最中でした。司法研修所には司法修習生が登庁せず、オンラインにて司法修習が実施されました。研修所の広い誰もいない階段教室に自分一人、画面に向かって話を続ける。黒い画面の向こう側にはきっと修習生が聞いてくれているだろうと思いつつ、教室は寒々していました。しかし、昨年度(第76期)からは司法修習生が登庁するようになり、研修所は修習生らに活気づきました。
 3月21日から始まった導入修習でも、修習生が教室に集い、活気があふれる中、私も3年間で最も良い講義ができたのではなかと思います。

 「ああ3年間が終わるのだなあ」、「長かったなあ」、「早かったなあ」、「楽しかったなあ」、「大変だったなあ」などの思いがこみ上げて涙ぐらい出るのかしら?と思って最後の講義に臨みました。しかし、案外、淡々と授業も終わり、修習生や他科目の教官らと写真を撮影して、あっけなく終わりました。が、徐々にですが、だんだん、寂寥感がこみあげてきました。
 講義に使う資料の作成・その打ち合わせ、講義の準備、起案(テスト)の採点などの基本業務のほか、3年目は上席教官として諸々の事務を処理しなければなりません。日常の弁護士の仕事をやりつつ、教官の業務はかなりの負担があり、常にその業務のことが頭を占めていました。
 でも、13日から、その業務が全くなくなるのです。かなりのウエイトを占めていた業務がなくなったのです。「ああ、もうやらなくてもいいんだな。」、「もう、やることがないんだな。」、「やりたくてもできないんだな。」。そんな思いがこみ上げてきました。
 本業に打ち込める時間ができたのでうれしいのですが、当面の間は、この気持ちと付き合っていく必要がありそうです。

 冒頭に述べた通り、正式な任期は19日まで、その後、あいさつ回り(26日の予定)などをして名実ともに終わりを迎えることになります。
 司法研修所教官職というなかなか就けない仕事を貰い、その中でも上席職を預かりました。この機会をいただけたことの幸運に感謝します。また、仕事を支えてくれた家族、司法研修所の同期・先輩後輩の教官・元教官、他教官室の教官や事務職の皆様、そして事務所の皆、ありがとうございました。

弁護士 廣田