脱ハンコ社会の幕開け?
2021年9月1日より,私たちの身の回りで「署名押印」や「記名押印」が必要とされてきた書類のうち一部について,押印義務が廃止されました。これは,2021年5月に公布された「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」により,48の法律が改正されたためです。
例えば,戸籍法が改正され,婚姻届や離婚届など戸籍関係の届出に押印は必要なくなり,署名のみでよいことになりました(証人も署名のみで可。)。なお,書式に押印欄は残るため,押印したい方は押印してもかまいません。押印してもしなくても,効果は同じです。
また,不動産取引の場面では,これまで重要事項説明書(いわゆる35条書面)と契約内容記載書面(いわゆる37条書面)に宅地建物取引士(かつての宅地建物取引主任者)の記名押印が必要とされてきましたが,今後は記名のみでよいことになりました。なお細かい話ですが,不動産の売買・交換の媒介契約を結ぶ際に作成される媒介契約書面には,引き続き宅地建物取引業者(不動産業者)の記名押印が必要です。
これまで日本では,様々な場面で押印が求められてきました。数多の法律に「押印」という言葉が用いられ,ハンコ文化が「制度化」されてきました。それが今回,戸籍の届出や不動産取引という重要な場面で押印義務が廃止されたことは,脱ハンコ社会の幕開けを感じさせます。
ちなみに,引き続き押印義務が残るものもあります。その一例は遺言です。また,裁判所に提出する訴状等も押印が必要になります。
今回の法改正を機に,企業でも脱ハンコ(さらにはペーパーレス化)を導入する動きが高まるだろうと予想されます。契約書類の脱ハンコ・ペーパーレス化にまつわる話については,別の機会に取り上げたいと思います。
弁護士K