無意識にとらわれている先入観を超えた先に

 「私は趣味は合唱です。今、男声合唱団に所属しています。」
 よくある自己紹介の一フレーズです。これを聞いた時、みなさんが想像される話し手は男性でしょうか?それとも女性でしょうか?

 考えるまでもなく、当然に男性と答えられる方が多いのではないでしょうか?
 実はこの話し手は女性(私)なのです。
 男声合唱団に女性が入ることなんてあるの?そんな問いかけが聞こえてきそうです。
 でも、よく見てみてください!
 男声合唱団の男声は男の「声」と書きます。男の「性」ではないのです。男声の音域の音を出すことが求められるのであって、男性であることは必須ではないのです。
 逆もそうで、女声合唱団の女声は女の「声」であり、女の「性」ではないのです。

 かくいう私も、以前は、男声合唱は女性である私とは無縁であると考えており、興味はあったものの男声合唱団への入団に「違和感」を覚える一人でした。
 この「違和感」は、何なのでしょうか。
 無意識に自分の中に根付いている先入観そのものなのではないでしょうか。

 いざ入団してみると、女声では出すことができない男声ならでは音域のハーモニーや迫力を体験することになり、新鮮な気持ちになったことを思い出します。それと同時に、これまでやってきた女声合唱のハーモニーの繊細さを改めて感じることができました。自身の合唱の世界が一気に広がりました。入団して一年以上になりますが、今では思い切って入団してよかったと思っています。

 これは一例に過ぎません。
 みなさんの中にも様々な場面で、無意識にとらわれている先入観があるのではないでしょうか。
 ぜひ、先入観を超えた世界に一歩踏み出してみませんか?そして、新たな自分を発見してみませんか?
 少し大げさかもしれませんが、「多様性」という言葉が巷にあふれている昨今、みなさんが個々に持つ先入観から一歩踏み出した先に、多様な価値観への理解が生まれるのではないでしょうか。多様な価値観の理解こそが「多様性のある社会」の実現への一歩なのだと考えています。

弁護士 平野