相続土地国庫帰属制度・相続登記の義務化(所有者不明土地関連)

 どちらも所有者不明土地の解消・予防に向けて導入された制度です。施行されてしばらく経ちますので、現状について少し調べてみました。

1 相続土地国庫帰属制度(R5.4.27施行)

 相続又は遺贈によって取得した土地が一定の要件を満たす場合に国庫に帰属させることができる制度です。建物が存在する土地、通路や水路として使用されている土地、境界が明らかでない土地、管理・処分に過分な費用・労力がかかる土地などは対象外となります。また、承認を受けた場合には負担金(標準的な管理費の10年分を考慮して算定された額)を納める必要があります。
 法務省が運用状況に関する統計の速報値を公開しており、R6.9.30現在、申請件数が2697件、帰属件数が868件、却下・不承認が80件、取下げが407件となっています(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00579.html)。審査途中で却下・不承認事由が判明して取り下げる件もあるようです。
 制度を利用したい場合、最初に法務局に事前相談をしますが、これまでの対面または電話での相談に加え、R6.10.15からウェブでの相談も始まったようです。色々と要件はありますが、相続した物件の扱いに悩んでいる場合には、本制度の利用についても一度検討してみてはいかがでしょうか。

2 相続登記の義務化(R6.4.1施行)

 不動産を相続した場合、相続人は、そのことを知ったときから3年以内に相続登記を申請する義務を負うことになりました。正当な理由なく申請を怠った場合には10万円以下の過料の適用対象とされています。なお、R6.4.1より前に相続した不動産についてはR9.3.31までに相続登記を申請する必要があります。
 とはいえ、遺産分割協議がまとまらないなど期限内に相続登記を申請することが難しいケースもあると思います。そのような場合に相続登記の義務を履行する方法として「相続人申告登記」が設けられました。単独で申告することができ、申告をした相続人の住所と氏名が登記されます。ただし、権利関係を示すものではないため、そのままでは売却などはできませんし、後に遺産分割協議が成立したときは、不動産を取得した相続人は遺産分割協議成立時から3年以内にあらためて登記する必要があります。

 また、相続登記の義務化に関連して、以下①②の実施が予定されています。
① 所有不動産記録証明制度(R8.2.2施行予定)
 相続人が被相続人名義の不動産を確認するための制度で、R8.2.2施行予定です。制度の詳細はこれからですが、全国の不動産の中から特定の住所・氏名の名義で登記された不動産をリスト化するようです。被相続人名義の不動産すべてを把握していない場合には、この制度を利用することで相続登記の申告漏れを防止できるのではないかと思います。

② 住所変更登記の義務化(R8.4.1施行予定)
 登記名義人の住所や氏名に変更があった場合には、変更の日から2年以内に変更登記を申請することが義務化されます。R8.4.1施行予定です。この日より前の変更についても、変更登記が未了の場合にはR10.3.31までに申請すべきこととされています。

弁護士 若林