オンラインカジノと賭博罪
昨今、芸能人やプロスポーツ選手が、オンラインカジノ(スマートフォンやパソコンなどを通じてオンライン上でゲームを行い、その結果に対して現金や暗号資産、電子マネーなどを賭けるもの)を利用していたことがニュースで報道されています。
警察庁によると、オンラインカジノの利用者や決済に関わった者、オンラインカジノを広告・宣伝した者などが賭博事犯として、令和3年に127人、令和4年に59人、令和5年に107人検挙されています。
今回は、賭博罪がどのようなものであるかということを説明します。
①単純賭博罪
単純賭博罪は、「賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。」(刑法第185条)と規定されています。
「賭博」とは、偶然の勝敗によって、財物・財産上の利益の得喪を2人以上の者が争う行為です。そのため、常に利益を得ることができる者がいた場合、偶然とはいえなくなるため、「賭博」には当たりません(常に利益を得ることができる者が相手方に勝てる余地があると騙して賭け事を行った場合、その騙した者は詐欺罪に当たり得ます)。
「一時の娯楽に供する物」とは、関係者がすぐに娯楽のために費消する物(飲食物やたばこなど)であり、判例によれば、金銭はその性質上、「一時の娯楽に供する物」に当たらない(=金銭を賭ければ賭博罪になる)とされています。
②常習賭博罪
常習賭博罪は、「常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処する。」(刑法第186条1項)と規定されています。賭博を反復して行うことにより、罰金刑ではなく懲役刑が科されるものであり、単純賭博罪よりも罰則が重くなったものとなります。
「常習として」に当たるかどうかは、賭博の種類・賭金額の多寡・賭博が行われた期間や度合い・前科の有無などの諸般の事情を考慮して裁判所が判断します。
オンラインカジノであっても、ゲーム内の無料ポイントのみでプレイしている限りは単純賭博罪や常習賭博罪に当たりませんが、最初は無料でプレイしていても、その後課金などでプレイにお金が発生しその状態でオンラインカジノを利用した場合、単純賭博罪や常習賭博罪が成立します。
また、オンラインカジノをプレイしている場所(犯罪場所)が日本国内であれば、たとえ海外で適法に運営されているオンラインカジノであっても単純賭博罪や常習賭博罪が成立します(刑法第1条)。
警察庁や政府広報もオンラインカジノは犯罪であるということを広報しており、警鐘を鳴らしています。
オンラインカジノはスマートフォンで手軽にできてしまうことから犯罪という意識が薄くなるおそれがあります。しかし、上記のようにオンラインカジノでお金が発生している場合、単純賭博罪や常習賭博罪が成立するのでご注意ください。
弁護士 寺沢